97条補償(通損補償)の交渉はどうやればいいのだろうか。
それがわかれば苦労はないともいえるが、結構見落とされているのではないかと思う視点につき述べたい。それは個々の補償の金額にこだわり過ぎてはうまくいかないということである。たとえば営業休止補償というのがあるが組合提示の金額が安いからといってその点ばかり交渉してはうまくいかないことが多い。
それは営業休止補償についての組合のロジックとかけ離れたところでいくら交渉しても空回りするからである。空回りすると時間だけがかかる。都市再開発の場合、補償交渉には時間的制約があり折り合いがつかなければ供託されてしまう。もちろん供託された後も交渉は可能であるが粘っていても補償が増えることはなくなる。
これに対し個々の補償ではなく補償全体に注目する交渉方法がある。これは補償額トータルいくらかにこだわるものである。もちろん突拍子もない金額にこだわっていては駄目だが常識的にみて折り合える金額というのを設定しそれを目指すことができれば交渉がうまくいくことが多い。というのはトータルいくらということであれば組合は個々の補償のうち上乗せできるものがないか検討し、上乗せできるものを集計してみる作業が可能になるからである。何が上乗せできるかは素人にはわかりにくいが、一定の資料があれば上乗せ可能な補償というのは結構ある。こうやって交渉の間口を広げていくのが賢明であるし交渉に時間的制約がある以上こうするしかないといえる。
補償交渉は木をみて森をみないようなことにどうしてもなりがちだが、代理人として長年やってきた私の率直な感想である。
