再開発における補償交渉・権利変換・交渉サポート専門の弁護士

武蔵法律事務所

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再開発 Q&A

再開発全般

再開発における交渉で注意すべき点はなんでしょうか?

一般論になりますが、組合の提示に納得がいかない場合に、自分が正当と考える根拠、理屈を組合に押し付けないことです。

権利変換にしましても補償にしましても「根拠」「理屈」は組合が決めるものであって、押し問答でどうにかなるものではないのです。そうではなく、「事実」に注意を払うべきです。事実には様々なものが含まれます。そして組合が解決のレールを示してくるようであれば、そのレールに乗って自分の要求を膨らませていくことです。
もちろん組合がオーバーランと考えれば、一定のラインでストップするよう求めるかもしれません。その場合はそこでいいかを再検討することです。

これが交渉です。

 意見書を出さないことで不利益はありますか? 

不利益というわけではないかもしれませんが、権利変換計画に記載された従前資産評価に不服がある場合、収用委員会に価額裁決の申請ができるのですが、この申請ができなくなります(都市再開発法85条1項)。従って、簡単でいいですから意見書を出しておくべきかもしれません。

権利変換通知が組合からきました。内容に納得がいきませんがどうしたらいいですか。

2つあると思います。1つは権利変換通知にも書いてあると思いますが、訴訟などを起こすことです。通知を受け取ってから6ヶ月以内です。もう1つは粘り強く組合と交渉することです。一旦権利変換になってもその変更は可能です。もちろん交渉がまとまったうえで、再縦覧や組合の決議が別途必要ですが。

再開発においては組合の事務担当の人が熱心に話を聞いてくれています。地元の内情もわかっているようです。弁護士に頼む必要がどこにあるのでしょうか?

素朴な疑問です。再開発の大きな特徴は、区域内に組合事務所があり、担当者が常駐して、頻繁に相談にのってくれることです。しかし、再開発は慈善事業ではありません。一見親身にみえますが、組合に不利益なことは教えてくれません。この点は大きな誤解があるようです。決して間違っているわけではないが、組合に不利益になるあそれのあることは隠す、曖昧にするなどは常套手段です。そこを問いただしていかないと組合(実際は参加組合員であるデベロッパー)の利益が最優先されてしまいます。また「弁護士さんに相談されるんですか?弁護士費用かかるだけですよ。組合にも顧問弁護士がいますからご紹介しましょうか」などと言ってくる組合さえあります。組合の顧問弁護士が中立であるはずはありません。

再開発反対

私が住んでいる場所が再開発されるといううわさを聞きました。どんな話かわかりませんが、私は今の居住環境に満足しており、再開発などして欲しくありません。このまま居座っていればいいのでしょうか?住んでいる自治体に陳情にいけばいいのでしょうか?

実は一番深刻な問題です。居座りを決め込んでも、行政に相談してもよくありません。再開発は先に進めば進むほど止められません。都市計画手続きの段階(できれば都市計画手続きに入る前)で当事務所にご相談下さい。都市計画決定後はどうにもならなくなります。

借家人

駅前の集客力がすぐれた場所を借りて営業しています。再開発ビルで営業できるそうですが賃料は大幅にアップするし以前のような集客ができるとも思えません。どうにかならないのでしょうか。

確かにそのとおりです。しかも都市再開発の場合はテナントは転出によって法外な立退料をとるというのは現実的でありません。ただ都市再開発の場合はテナントに特定分譲といって再開発ビルの区画を比較的安く買う権利が認められることがあります。もちろん資金は必要ですが補償金交渉で原資を増やすなどしてオーナーになる方法があります。なお、特定分譲をうける場合は転出する(借家権消滅申出書を組合に提出する)ことが条件となります。テナントに十分な情報が行きわたらないこともあるのであらかじめアンテナを張り巡らしておく必要があります。

新しいビルに入る場合、賃料や管理費が大幅にアップします。かなり負担と思いますので転出されてはいかがでしょうか、と組合に言われました。どう考えたらいいですか?また、どのくらいの賃料になるのか聞いても「詳しいことはわからない」などと
取り合ってもらえません。どうしたらいいですか?

このように言われても簡単に転出するべきではありません。組合からは漠然とした条件しか言われないかもしれませんが、だからといって権利を安易に放棄しないことです。都市再開発でテナントに確実に保障されているのは権利変換だけです。このカードを使って組合や大家に対抗していくしかありません。

他のテナントさんはみんな転出されますので貴社も転出されてはいかがですか、と言われました。再開発の場合、テナントは転出してしまうものなのでしょうか?

組合がそのようなことを言っても真実とは限りません。テナントが残るケースも沢山あります。惑わされないようにして下さい。

テナントですが再開発区域に入っている場合、出ていかなければなりませんか?

その必要はありません。当然、工事期間中は仮移転しますが、再開発ビルが完成したら戻ってくることができます。

建物調査

再開発区域内に建物を所有しています。テナントに貸していましたが再開発で程なく解体されるということだったので契約を更新しませんでした。ところがその後、再開発のスケジュールが大幅に延期になりました。そこで少し改築してテナントに貸して賃料収入を得たいのですが何か注意点はありますか?

主に2つあります。1つは新しく入ったテナントが再開発にあたってきちんと退去するよう慎重に契約条件を決めることです。もう1つは建物調査の前に改築することです。組合設立の前後でも変わってきますので(準備)組合と十分協議することが必要です。建物調査の後に改築すると建物評価に改築が反映されません。

準備組合から建物調査をしたいという連絡がありました。再開発に賛成というわけでもないし、家の中に入られるのも嫌です。応じるべきなのでしょうか?

建物調査は「正当な理由」がない限り拒めません。「正当な理由」があると言って突っぱねるのも可能ですが、建物の外観などから物件調書を作成されてしまうことになるので、権利変換、補償の点でかえって不利益です。建物調査のやり方につき要望があるのであれば事前に調査会社と取り決めておくべきでしょう。

転出申出

組合設立が認可されたので30日以内に転出申出と金銭(補償金)給付申出の書面にサインして出して欲しいと組合から言われました。突然の話で30日間では判断できません。どうしたらいいですか?

組合設立認可公告から30日というのは最初の評価基準日のことです。「評価基準日」において物件の評価をしますのでその日までに権利変換するか転出するかを組合に届ける必要があります。しかし都市再開発法上、評価基準日は6ヶ月毎に更新されます。すなわち、最初の評価基準日から6ヶ月以内に縦覧が開始されない場合は評価基準日は6ヶ月後遅くなります。このように更新された場合は新しい評価基準日の翌日から30日以内に転出申出をやり直すことができます。組合設立認可公告から縦覧開始まで6ヶ月以上かかる再開発も多く、その場合は評価基準日が変わるので転出申出を急いでする必要はありません。なお転出申出期間経過後は転出申出できないのが法の建前ですが、組合が例外的に認めている場合があります。これは組合が転出申出をなるべくして欲しい(出ていって欲しい)場合です。法の建前とは異なるので説明会などオープンな場では組合の説明が歯切れ悪くわかりにくことがあります。

評価

地権者です。組合の出してきた従前資産評価額があまりに低いので「これでは納得できない。もう1度評価し直して持ってきて欲しい」と言って待っているつもりです。それで問題ありませんか?

従前資産額に不服がある場合は積極的に交渉していかないとそのままの額を基準に権利変換されてしまいます。組合の評価基準が妥当か含めて交渉することになります。またこの分野は不動産鑑定士の助けを借りないと交渉困難です。

物件調書

物件調書に署名捺印するよう求められました。物件調書を読んでもよくわからないのですがそのまま署名捺印して問題ないですか?

署名押印は慎重にして下さい。署名押印してしまうと物件調書の内容が真実だと推定されてしまいます。これを後で覆すのは大変です。十分検討しておかしいと思ったら署名押印せず専門家に相談して下さい。なお署名押印をしないで放置していると区職員が立ち会って署名押印して先に進んでしまいます(吏員立会い)。その前に相談することが重要です。

補償

自己所有の建物で自営で飲食店を経営しています。再開発ビルでも飲食店を続ける予定です。工事期間中に仮店舗で営業するのですが売上は大幅に減る見込みです。これは再開発の結果ですから組合に営業補償して欲しいと言ったところ「ほとんど出ない」の一手張りです。このまま赤字覚悟で仮店舗を借りて営業するしかないのでしょうか。

お気持ちはわかります。しかし再開発の補償では個別の事情は考慮しない傾向にあります。売上が大幅に減るというのは個別の事情です。不当な理屈と思われるでしょうが、ここで理屈を変えて「出させようとしても」疲弊するだけです。再開発の補償には逆に個別の事情を無視して「出してくれる」補償もあります。そちらで攻めるのがいいかもしれません。

ビルをテナントに貸しています。再開発の話を聞いたのか退去するテナントが増え始め家賃収入が大幅に減ってしまいました。再開発工事が始まるまでは数年かかるようです。これから新規に入居するテナントも見込めないので賃料の補償を受けたいのですが可能ですか?

組合によっては家賃欠収補償として払ってくれる場合があります。(準備)組合に相談して下さい。ただ家賃欠収補償は組合設立認可後にテナントが出た場合に限るのが一般です。

上記質問の続きですが、そうしますと組合の提示した補償額で折れるしかないのでしょうか?

組合は補償基準を作成しています。そしてその補償基準にもとづいて補償額を提示してきます(その用紙を「個票」といいます)。補償基準そのものは誰が交渉しようと変わりません。しかし補償額についてはそうではありません。粘り強く交渉することが重要です。

テナントです。転出予定です。組合が提示してきた補償金額があまりに低いので、組合が譲歩してくるまで話し合いに応じる予定はありません。それで問題ないでしょうか

それは危険です。確かに、補償額について組合はテナントと協議する義務を負いますが、最後まで協議が成立しない場合は審査委員の過半数の同意をとって補償額を決めてしまうことができます。テナントは、これに対し、収用委員会に不服申立て(補償裁決申請)をすることは可能ですが、結果が出るまで時間がかかる反面、不服申立てが認められる可能性は低いといえます。また、組合は自分で決めた補償金を供託してしまえば当面テナントに支払う義務もないので、テナントは自腹で移転しなければならないことになります。増額してもらうおうと思っていたら突然交渉を打ち切られて明渡しを迫られるというケースは結構あります。徹底抗戦するのであれば「居座り」は逆効果です。

テナントに出る補償にはどういうものがありますか?

都市再開発法97条の「通常受ける損失」の「補償」(これを「通損補償」といいます)です。通常のテナントの場合、「工作物補償」「動産移転補償」「借家人補償」「営業休止補償」「移転雑費補償」などが払われます。なお、転出する場合に都市再開発法91条の「借家権補償」が支払われるかは1つの大きな問題です。なお、借地借家法上の立退き料が払われる場合もあります。転出を条件に解決金という名目で払われるのが通常です。

組合が書面で提示してきた補償額が低すぎると思うのですがどうしたらいいですか?

組合と協議します。どうしてもまとまらない場合は都道府県の収用委員会に裁決の申請ができます。ただ組合との協議で増える場合は少ないし裁決で増える場合も多くありません(裁決申請は実費がかなりかかります)。弁護士を依頼して交渉するか訴訟でしょう。

再開発と相続

再開発区域内に土地建物があり、高齢の両親が居住しています。私は長男ですが弟がいます。両親は、死んだら不動産は私に与える、とかねがね言っています。相続の関係で何か注意すべき点はありますか?

権利変換前に両親が亡くなってしまうと、遺産分割登記できないまま権利変換になるおそれがあります。そうなると法定相続分に従って土地建物を権利変換することになります。単独で取得できたはずの床が2分の1の広さしか取得できなくなるおそれがあります。
弟さんとの間ですぐに遺産分割協議がまとまるようにしておくか、あるいはご両親に遺言を書いてもらうか、いずれかになります。

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